所得税・住民税を知る ~生命保険料控除はお得なの?~
前回、「いらない保険」というタイトルで記事を書かせていただきました。
保険は相互扶助の考え方で、いざという時のリスクに備えるもの。
保険はいらないよ!ということではなく、しっかりと試算をしてみて、必要なものに絞り込むという考えにおります。
さてそんな保険ですが、
「保険はリスクに備えることに加え、節税にもなる!」
ということを聞いたことがないでしょうか?
今回は、所得税・住民税それぞれにおいて控除の対象となる
「生命保険料控除」についてまとめさせていただきます。
また、生命保険料控除を説明するには、所得税&住民税の仕組みについて知らなくてはならないため、メインはこちらの解説になります。
この記事はこんな人におすすめ!
・所得税・住民税の仕組みについて知りたい!
・保険に入ろうと思っているけど、どれくらい節税になるのか知りたい!
よろしくね
たのしみ!
所得税ってなに?
所得税とは、1年間(1月1日~12月31日)のすべての所得から、「所得控除」によって差し引いた金額に(課税所得)、一定の税率を適用して算出される税金のことです。
所得には、10種類あります。
これら所得の課税方法は「総合課税」と「分離課税」の2種に分かれ、分離課税の特例として、「源泉分離課税」があります。
所得の内容によって課税方法は変わります。
分離課税、厳選分離課税については今回は割愛させていただきますが、下記サイトに説明があるので、よければご覧ください。
所得税の計算方法
ここでは、主に所得控除がかかわってくる「総合課税」の所得税について見ていきます。
所得税の出し方は下記の通りになります。
①給与収入ー必要経費(給与所得控除)=給与所得
②総所得(給与所得+総合課税所得)ー所得控除=課税所得
③課税所得×税率ー税額控除額=所得税
順番に解説をします。
①まずは給与所得を出します。
給与収入(会社の給与・ボーナスなどの合算)ー必要経費(給与所得控除)=給与所得
給与所得控除はこちらです。
例)東京都在住。30歳独身。給与収入が500万円のAさんの場合。
500万円ー(500万円×0.2+44万円)
=給与所得(356万円)
②総所得から、各種所得控除を引いていき、課税所得を出します。
先ほどの給与所得に、総合課税所得を合算していきます。(今回は給与のみですが、配当所得等あれば、足すだけです)
例)給与所得(356万円)=総所得(356万円)
所得控除は全部で15種類あります。
それぞれ要件、控除限度額と設定がありますので、詳しくは国税庁のHPを見ていただければと思います。
例)一旦ここではサラリーマンに主に関係してくる、基礎控除(※1)と、社会保険料控除(※2)を引いていきます。
※1基礎控除の控除額
・2,400万円以下なら控除額は48万円
・2,400万円超2,450万円以下なら控除額は32万円
・2,450万円超2,500万円以下なら控除額は16万円
・2,500万円超なら控除額は0円
※2社会保険料控除とは、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の3種からなり、給与から毎月天引きされている。
その計算方法は、標準月額報酬(1か月の給与)×各種保険料率であり、2020年9月から32等級の65万円が上限に。保険料率は都道府県によって協会けんぽは都道府県によって、健康保険組合は組合ごとに異なる。
上記参考より、ここでは23等級、標準月額報酬を32万円
⇒健康保険料:15,744円,厚生年金保険:29,280円 と計算すると
1年間で54万288円
給与所得(356万円)ー基礎控除(48万円)ー社会保険料控除(54万288円)
= 課税所得(253万9712円)
となります。
ちなみに、会社員や公務員などの給与所得者は、勤め先が年末調整という形で控除を行っており、基本的には自身で申請をしに行く必要はありません。
しかし、
・雑損控除
・医療費控除
・寄附金控除
の3つに関しては、所得税の控除を受けるには確定申告をする必要があります。
その際には証明として添付書類が必要になるため、病院の領収書や寄附金受領証明書を用意しておきましょう。
※寄付金控除のうち、「ふるさと納税」は「ワンストップ特例制度」を活用すれば確定申告は不要になります。詳細はこちら↓
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③課税所得に税率をかけ、税額控除額を引き、所得税を出します。
所得税の税率は、課税所得金額に応じて、段階的に高くなる「超過累進税率」を採用しています。
簡単にいえば、所得の少ない方よりも、所得の多い方のほうが、その分、多くの税金を納める仕組みのことです。
下表は、課税所得金額と税率、控除額をまとめたものです。
例)課税所得(253万9712円)×0.1ー9万7,500円
= 所得税(15万6,471円)
Aさんの所得税は、15万6,471円となりました。
所得税の支払い方法
所得税の支払い方法は、個人事業主やフリーランスと、サラリーマンとでは納付時期も異なります。
個人事業主やフリーランスは、毎年2月16日~3月15日に確定申告を行ないます。 申告とあわせて納税も行なう場合には納税も3月15日までに行なう必要があり、申告・納税の手続き先は納税地の税務署(一般的には住所地の税務署)です。
サラリーマンは毎月の給与からざっくりした金額を差し引かれ(源泉徴収)、年末調整にて帳尻を合わせます(所得控除も含め、払いすぎたものは還ってくる)。
ここまでのまとめ
・所得には種類があり、課税のされ方も違う。
・課税所得が多くなるほど、所得税は高くなる。
・所得控除を活かして、課税所得をがんがん下げていけば、その分税金は安くなる!
所得税について、だんだんわかってきたね。
でもふくざつだ・・・
住民税ってなに?
続いて住民税についてです。
住民税とは地方税の1つで、1月1日の住所地(基本的に住民票のある住所)で課税されます。
住民税には、都道府県民税と区市町村民税に分かれていますが、合算して納税し、後に分配されるため、2つ合わせたものを住民税ということが多いです。
この住民税は、地域ごとに若干税率が異なりますが、
課税所得のざっくり10%くらいです。
地域ごとに異なるんだね
きょうみぶかいね
住民税の計算方法
住民税は、勤め先が支払う「法人住民税」と、個人で支払う「個人住民税」があり、いずれも「所得割額」と「均等割額」を合算したものが納税額になります。
住民税=
①所得割額(所得によって変わる。住民税の主役的存在)
+
②均等割額(同じ自治体に住む納税者は同額で支払うもの)
①所得割額を出す
所得割額の計算式は下記のとおりです。
給与収入ー給与所得控除=給与所得
給与所得ー各種所得控除=課税所得
課税所得×税率10%=所得割
所得割ー調整控除=所得割額
ん!?調整控除ってなんだ!
なんだなんだ!
調整控除とは
非常にわかりづらいこれのせいで、税金がどんどん複雑になっていきます。
国民が増税に気づかないように、わざとやっているのではと思うくらいです。
これまでご紹介させていただいたように、計15種類の所得控除があります。
この所得控除には、所得税・住民税それぞれに「上限控除額」が設けられています。
上限控除額を比較すると、所得税より住民税のほうが少なくなっているのです。
例)
☆扶養控除
住民税:33万円(特定45万円、老人38万円、同居老親45万円)
所得税:38万円(特定63万円、老人48万円、同居老親58万円)☆基礎控除
住民税:43万円(合計所得金額2,400万円以下の場合)
所得税:48万円(合計所得金額2,400万円以下の場合)
差があるね。ここ大事!
このように所得税と住民税の控除額には差があります。
この差があることで、調整控除というものが生まれるのです。
課税所得を(A)このうち「※人的控除」と呼ばれる所得控除の差額を(B)とします。
※所得控除は、「人的控除」と「物的控除」に分けることができる。
人的控除は、
・基礎控除
・扶養控除
・障害者控除
・寡婦控除
・ひとり親控除
・勤労学生控除
(※それ以外が物的控除。)
課税所得(A)が200万円以下の時、
A・Bいずれか小さい金額×5%=調整控除
課税所得(A)が200万円を越える場合、
Bー(Aー200万)=C
※Cが5万円未満だった場合は、一律5万円。
C×5%=調整控除
となります。
例)Aさんは総所得356万円。住民税の基礎控除は43万円になり、社会保険料は同様に引くと課税所得は、258万9712円となる。
人的控除の差額(5万円)ー(258万9712円ー200万円)
=ー53万9712円
※5万円未満なので一律5万円の調整控除。
課税所得(258万9712円)×10%=所得割(25万8,971円)
所得割(25万8,971円)ー調整控除(5万円)
=所得割額(20万8,971円)
調整控除は、所得税を減らし、住民税を上げようとした政策のしがらみらしいよ。住民税の方が、控除が低いから増税になるんだけど、それを調整しようとして生まれたもの。ただ、人的控除にしか調整されないから、生命保険料控除とかやっていた人は調整されず、ただ増税になっただけなんだよね。
もっとシンプルにしてほしいね!
②均等割額を出す。
均等割は
道府県民税1,500円と、市区町村民税3,500円です。
つまりAさんは、
所得割額(20万8,971円)+均等割額(5,000円)
=住民税21万3,971円となりました。
生命保険料控除とは
とてもとても前置きが長くなりましたが・・・・
生命保険料控除についてです!!
生命保険料控除の対象となる保険
生命保険料控除の対象となる保険は大きく3つに分けられます。
一般生命保険料
生存または死亡した場合などに起因して一定額の保険金が支払われる保険が対象。
保険金の受取人が、保険料を支払う本人またはその配偶者、その他の親族である必要がある。定期保険や終身保険、養老保険、学資保険などが該当します。
個人年金保険が対象。ただし対象となるのは、
- ・年金の受取人が保険料を支払う本人またはその配偶者
- ・保険料を10年以上にわたって定期的に支払う
- ・60歳になってから、10年以上の定期、もしくは終身で年金を受けとる
- ・「個人年金保険料税制適格特約」を付加している
- ・年金の受取人が被保険者と同一
- 上記を満たしている個人年金保険の契約となります。
介護医療保険料(新制度のみ)
疾病または身体の傷害等により保険金・給付金が支払われる保険が対象。
医療保険やがん保険、介護保険、就業不能保険などが該当します。
こちらは、「旧制度」か「新制度」かで、控除額が変わります。
☆旧制度・・・2011年12年月31日以前に締結した保険契約など
☆新制度・・・2012年1月1日以降に締結した保険契約など
それぞれの控除限度額
☆旧制度
☆新制度
所得税に関わる計算式は、下表のとおりです。
☆旧制度
「一般生命保険料」「個人年金保険料」それぞれに適用され、あわせて10万円が限度となります。
☆新制度
「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」それぞれに適用され、あわせて12万円が限度となります。
住民税に関わる計算式は下表のとおりです。
☆旧制度
「一般生命保険料」「個人年金保険料」それぞれに適用され、あわせて7万円が限度となります。
☆新制度
「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」それぞれに適用され、あわせて7万円が限度となります。
※旧制度・新制度両方を持っている場合は、控除の大きい方を選択する形になります。
生命保険料控除のシミュレーションをしてみる
保険に入ったとき、どれくらい控除があるのか、シミュレーションしてみましょう。
ケース①
Aさん:
・給与収入500万。給与所得は356万円。
・旧制度生命保険、一般生命保険料で年間10万円の支払い。
・所得税控除は5万円、住民税控除は3万5、000円となる。
☆所得税
356万円ー基礎控除(48万円)ー生命保険料控除(5万円)ー社会保険料控除(54万288円)
=課税所得(248万9、712円)
課税所得(248万9、712円)×10%ー9万7,500円
=所得税(15万1,471円)
※生命保険料控除がなかった場合は、15万6,471円だったので、5,000円安くなりました。
☆住民税
356万円ー基礎控除(43万円)ー生命保険料控除(3.5万円)ー社会保険料控除(54万288円)
=課税所得(255万4、712円)
課税所得(255万4,712円)×10%=所得割(25万5,471円)
所得割(25万5,471円)ー調整控除(5万円+1.5万円)
=所得割額(19万4,712円)+均等割額(5,000円)
=住民税(19万9,712円)
※生命保険料控除がなかった場合は21万3,971円だったので、14、259円安くなりました。
つまり、
旧制度の一般生命保険に対し、年間10万円の保険料を支払うことで、
5、000円+14、952円=19,259円お得になるということです。
ケース②
Aさん:
・給与収入500万。給与所得は356万円。
・新制度生命保険、一般生命保険料で年間10万円の支払い。
・所得税控除は4万円、住民税控除は2万8,000円となる。
☆所得税
356万円ー基礎控除(48万円)ー生命保険料控除(4万円)ー社会保険料控除(54万288円)
=課税所得(249万9、712円)
課税所得(249万9、712円)×10%ー9万7,500円
=所得税(15万2,471円)
※生命保険料控除がなかった場合は、15万6,471円だったので、4,000円安くなりました。
☆住民税
356万円ー基礎控除(43万円)ー生命保険料控除(2.8万円)ー社会保険料控除(54万288円)
=課税所得(256万1、712円)
課税所得(256万1,712円)×10%=所得割(25万6,171円)
所得割(25万6,171円)ー調整控除(5万円+1.2万円)
=所得割額(19万4,171円)+均等割額(5,000円)
=住民税(19万9,171円)
※生命保険料控除がなかった場合は21万3,971円だったので、14、800円安くなりました。
つまり、
新制度の一般生命保険に、年間10万円の保険料を支払うことで、
4、000円+14、800円=18,800円お得になるということです。
今回は1種類でやったけど、ご自身の状況に合わせて色々試してみてね!
よ~くわかったよ!
最後に
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
所得税、そして住民性の計算は非常に面倒くさく、いちいち考えてらんないよな~と思ったりします。
もっとシンプルに、キリのいい数字にしてほしい!
しかし知らぬは損なので、控除できるものは限界まで行うこと。
とっても大事ですね!
特に申請をしなければ流れてしまう、
・寄付金控除(ふるさと納税は超おすすめ。ワンストップを使えば確定申告も不要)
・医療費控除(今後プログ内でも解説させていただきます)
・雑損控除
は意識的に!
ありがとう
またよろしくね!